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武蔵工業大学 平井昭司教授が、西本願寺境内で鉄鍛冶が行われていたことを科学的に証明

〜理化学的手法と原子炉を利用した中性子放射化分析法を用いる〜

武蔵工業大学工学部原子力安全工学科・平井昭司教授らの研究成果により、西本願寺境内にある建造物に使用された鉄釘類の鍛冶加工が境内で行われていたことが科学的に証明されました。


境内の防災設備充実の工事に伴う発掘調査を(財)京都市埋蔵文化財研究所が行ったところ、御影堂南面の書院唐門周辺の一角から数多くの鉄滓が出土しました。
これらの鉄滓の一部を理化学的手法により分析したところ、御影堂に使用されていた瓦用鉄釘や建築用鉄釘等を鍛冶加工したとき排出された鉄滓であることが分かりました。鉄滓には、砂鉄あるいは鉄鉱石から鉄をつくるとき排出する滓(かす)と、鉄材を鍛冶により加工するとき排出する滓とがありますが、今回光学顕微鏡で結晶組織を観察したところ鍛冶滓に特有なウスタイトやファイヤライトの結晶像が存在していました。

また、これらの鉄滓の中には、鉄塊を含有するものがあり、鉄塊部中に含有する微量元素を原子炉を利用した中性子放射化分析法により定量すると、以前分析した御影堂の瓦用鉄釘や梁の一種である裏甲に使用していた鉄釘の成分とほとんど類似しました。特に、鉄原料の産地推定が行えるヒ素(As)とアンチモン(Sb)の濃度比をみると、鉄塊部や鉄滓での値は全て約10であり、瓦用鉄釘(長さ:30〜40cm、重さ:300~400g)と裏甲用鉄釘(長さ:約20cm、重さ:約100g)の値とも等しなりました。なお、これらの鉄原料はAs/Sb濃度比、砂鉄特有のTiとV濃度の関係、明治末及び昭和初期に出雲地方でたたら操業した鉄の分析値と比較して同一であることが明らかとなりました。

御影堂は、寛永13年(1636年)に再建された世界最大級の木造建築物で重要文化財に指定されており、建立から現在までの間、寛政12年(1800年)から文化7年(1810年)に一度大修復が行われました。
今回平成10年(1998年)から平成20年(2008年)に掛けて平成の大修復工事が行われましたが、このとき約3500本の瓦用鉄釘が使用されていたことを確認しました。

今回出土した鉄滓は、このような多量の鉄釘を加工したとき排出されたもので、出雲地方で生産された鉄が西本願寺境内に運ばれ、境内で種々の用途に加工されていたことが推察されます。

瓦くぎ  鍛冶滓の切断後の金属部


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